『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』4Kリマスターによせて

監督:富野由悠季

デジタル技術が進歩して、殊にブルーレイ以後の復刻作品が「オリジナルに忠実」に再現していないのではないかと感じるようになっていました。画像に関しては、妙にクリアになってしまって、フィルム時代のフィーリングを再現しているとは思えないケースは、多々あります。それでもクリアになっているので見やすくなったのも事実です。そうなりますと、次に問題になるのが音声で、磁気テープか光学処理のものだからデジタル技術で転換していく過程でおこる音質の変化があったりして、かならずしもオリジナルに忠実ではないのです。バランスが崩れている、という感覚がつきまとうのです。

今回、4Kリマスター化にあたって、オリジナルの音声を4.1ch対応にしたものでチェックした時に、劇場版として大切にしていた雰囲気音(環境音ともいいます)が聞こえにくくなっていました。その改善を申し出たところ、関係スタッフもこの問題については理解がありましたので、オリジナルから抽出した音声を利用する作業をおこなって、再ダビング作業をしていただきました。これで、ようやく劇場版の音声になったと思っております。つまり、大型モニターで4Kの画質に対応した音声になって、映画的に鑑賞できるものになったのです。無論、小型モニターでの鑑賞でも雰囲気は大切ですので、無駄な仕事ではなかったと信じております。関係各位のご協力にはむろんのこと、時代が過ぎても鑑賞していただけることに感謝いたします。